「なんだか生きづらい」と感じる理由とは?

なぜ「生きづらさ」を感じるの?

では、なぜこういった「生きづらさ」を感じるのでしょうか?主な理由をいくつか見ていきましょう。

(1) 人それぞれの脳の働き方の違い

私たち人間の脳は、一人ひとり少しずつ違う働き方をします。例えば、細かいことによく気づく人もいれば、全体の流れをつかむのが得意な人もいます。几帳面な人もいれば、大雑把な人もいます。

これは、どちらが良いとか悪いとかいうものではありません。ただ、自分の脳の特徴と、周りの環境や期待とがミスマッチを起こすと、「生きづらさ」を感じることがあるのです。 わかりやすい例として「自閉スペクトラム症」が挙げられます。

これは従来の「自閉症」の概念が進化したもので、最新の研究では自閉症の特性は明確な線引きではなく、連続的なスペクトラム(範囲)として存在すると考えられています。 具体的には、「社会的コミュニケーションの難しさ」や「限定された興味や反復的な行動」といった特徴が、程度の差こそあれ、誰にでも見られるというわけです。例えば、人付き合いが得意な人もいれば苦手な人もいる、特定の趣味に没頭する人もいればそうでない人もいる、といったことも挙げられるでしょう。ですが、その特性が強く出ると「生きづらさ」を感じることもあります。

(2) 心の状態

不安が強かったり、自信が持てなかったりすると、日々の生活に大きな影響を与えます。また、過去のつらい経験が心に残っていて、それが今の行動に影響していることもあります。

まず「不安症」です。不安を感じることは人間の自然な反応ですが、それが過度になると日常生活に支障をきたすことがあります。これが「不安症」と呼ばれる状態です。 不安症には様々なタイプがあります。例えば、人前で話すことを極度に恐れる「社交不安症」や、些細なことでも過度に心配してしまう「全般性不安症」などがあります。アメリカ精神医学会の統計によると、生涯でおよそ5人に1人が何らかの不安症を経験するとされています。つまり、決して珍しいものではないのです。

また、過去のつらい経験(トラウマ)も「生きづらさ」の原因になることがあります。トラウマは大規模な災害や事故だけでなく、いじめや虐待、長期的なストレスなども、トラウマの原因となり得ます。トラウマを経験すると、脳の働き方が変化することが分かっています。特に、扁桃体という感情を司る部位が過剰に反応しやすくなり、些細な刺激でも強い不安や恐怖を感じやすくなります。これが安全な状況でも常に緊張していたり、人間関係で不必要に身構えてしまったりする原因となることがあるのです。

最近では、トラウマが人に与える影響を理解し、それを考慮しながらケアを行う「トラウマインフォームドケア」という考え方が注目されています。この方法は、過去の経験が現在の行動にどう影響しているかを理解し、より適切なサポートを提供することを目指しています。

(3) 周りの環境

現代社会は、情報があふれ、常に何かをしていなければいけないようなプレッシャーがありストレスフルな環境にいる方が多いのが現実です。SNSを見ると、誰もが充実した毎日を送っているように見えて、焦りを感じることもあるでしょう。

また、職場や学校での人間関係、家族との関係など、私たちを取り巻く環境も「生きづらさ」の原因になることがあります。

(4) 感覚の敏感さ

人によって、音や光、触感などへの反応が異なります。特に敏感な人は、他の人には何でもないような刺激でも強く感じてしまい、日常生活で疲れやすくなることがあります。

これは、その人の「個性」や「特徴」であって、決して「欠点」ではありません。ただ、周りの理解が得られにくかったり、自分でも「なぜこんなに疲れるんだろう」と悩んだりすることがあるのです。

「生きづらさ」とどう付き合っていけばいい?

「生きづらさ」の原因が分かったところで、では、どのように付き合っていけばいいのでしょうか?ここでは、3つのアプローチを紹介します。

(1) 自分の個性を認めよう まずは、自分自身をよく知ることから始めよう

  • 自分の「取扱説明書」を作ってみる: 自分の特徴、好きなこと、苦手なことをリストにしてみましょう。例えば、「一人で集中して作業するのが得意」「人と話すのが好き」「騒がしい場所が苦手」といった具合です。これを書き出すことで、自分の特徴を客観的に見ることができます。
  • 良かった経験を思い出す: 過去にうまくいったことを振り返り、そこで活かされた自分の良さを見つけましょう。「あの時、私のこんな面が役に立ったんだ」と気づくかもしれません。
  • 見方を変えてみる: 自分の「欠点」だと思っていたことを、別の角度から見てみましょう。例えば、「優柔不断」は「慎重さ」、「頑固」は「信念の強さ」と捉え直すこともできます。

自分の特徴を知り、受け入れることで、「自分らしく」生きるヒントが見つかるかもしれません。

(2) 自分に合った環境を作ろう

次に、自分に合った環境づくりを心がけましょう。

  • 刺激を減らす時間を作る: 一日の中で、静かな時間や場所を意識的に作ってみましょう。例えば、昼休みに少し一人の時間を持つ、帰宅後にリラックスする時間を設けるなどです。
  • 小休憩を取り入れる: 仕事や勉強の合間に、短い休憩を入れてみましょう。5分でも良いので、深呼吸をしたり、窓の外を眺めたりするだけでリフレッシュできます。
  • 心地よい環境を見つける: 自分にとって居心地の良い場所や状況を見つけ、できるだけ多く取り入れましょう。好きな音楽を聴く、好きな香りのアロマを焚く、気に入った場所で作業するなど、小さな工夫で大きな違いが生まれることがあります。

自分に合った環境を整えることで、日々のストレスを軽減できる可能性があります。

(3) 必要なら専門家に相談しよう

時には、一人で抱え込まずに専門家の力を借りるのも良い選択肢です。

  • 自分に合った専門家を探す: カウンセラーや心理士、精神科医など、様々な専門家がいます。自分の悩みや状況に合った専門家を探してみましょう。
  • まずは試しに相談してみる: 多くの専門家が初回無料相談を提供しています。まずは気軽に話を聞いてもらうところから始めてみるのもいいでしょう。必要に応じて心理検査や発達検査を受けることも自己理解に役立ったり、具体的な対処を考える手立てにもなります。近くに相談先がない、という方もオンライン相談も検討することをおすすめします。

専門家に相談することで、新しい視点や具体的な対処法が見つかるかもしれません。

最後に

「生きづらさ」との付き合い方は人それぞれです。ここで紹介した方法は、あくまでヒントに過ぎません。大切なのは、自分の生きづらさの傾向を理解して自分に合った方法を少しずつ見つけていくことです。そして、その過程自体があなたの人生をより豊かにしていくのです。

今は「生きづらい」と感じていても、それがいつか「自分らしさ」や「強み」に変わる日が来るかもしれません。例えば、細かいことに気づく特性が仕事で高く評価されたり、感受性の豊かさが創造的な活動につながったりすることがあります。

焦らず、自分のペースで歩んでいきましょう。一歩一歩、自分を理解し、受け入れていく過程で、あなたなりの「生きやすさ」が見つかるはずです。

「生きづらさ」は、決してあなたの欠点だけの側面しかないわけではありません。それは、あなたの繊細さや深い思考力、鋭い観察力の裏返しかもしれません。そんなあなたの特徴を大切にしながら、より快適に、より自分らしく生きていく方法を探ってみてくださいね。

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